親知らずが生えてきたことで、歯並びが悪くならないか不安を感じている方は少なくありません。特に横向きや斜めに生えた親知らずは、周囲の歯を押し出し、歯列全体の乱れにつながることがあります。
本記事では、親知らずと歯並びの関係性をわかりやすく解説します。抜歯が必要なケースと残しておいても良いケース、さらには矯正治療との関連についても詳しくご紹介します。
正しい知識を身につけることで、ご自身の親知らずについて後悔のない判断ができるようになります。歯並びの変化が気になっている方は、ぜひ最後までお読みください。
監修:
親知らずの放置は歯並びの悪化を招くのか
親知らずをそのままにしておくと、将来的に歯並びが乱れるリスクは十分に考えられます。親知らずは永久歯の中で最も遅く生えてくるため、顎(あご)の骨に十分なスペースがない場合に、他の歯を無理やり押し出してしまうことがあるからです。
特に横向きや斜めに生えている状態では、手前の歯に対して常に強い圧力がかかり続けます。この微細な力が長期間加わることで、少しずつ歯列全体が前方に押し出され、最終的に歯並びの悪化につながる可能性があります。(※1)
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※1)下顎第三大臼歯は、下顎歯列の叢生および下顎歯列弓の狭窄に関与する可能性がある。ただし、より質の高い前向き研究が必要である。
前歯の重なりやズレの発生
親知らずが横や斜めに向かって生えると、手前にある第二大臼歯(だいにだいきゅうし)を強く押し出します。この押し出す力がドミノ倒しのように前方の歯へ次々と伝わっていくことがあります。その結果として、歯列の中で最も抵抗力の弱い前歯部分にしわ寄せがいき、歯が重なったりズレたりする一因となる可能性があります。
特に下の前歯は影響を受けやすく、徐々に叢生(そうせい)と呼ばれるガタガタの歯並びになる傾向があります。ゆっくりと進行するため、気づいた時には大きく歯並びが崩れていることも少なくありません。
前歯の見た目が変化してきた場合は、早めに歯科医院で確認することをおすすめします。
全体の噛み合わせバランス崩壊
前歯だけでなく、奥歯の噛み合わせにも悪影響を及ぼすことがあります。親知らずが不自然な方向へ伸びることで、本来噛み合うべき上下の歯の接触面積が変化してしまいます。一部の歯にだけ異常な負担がかかるようになると、顎の関節にも悪影響を与えかねません。
日々の食事で噛みにくさを感じている場合、親知らずが噛み合わせのバランスを崩している可能性が指摘されています。噛み合わせが狂うと、肩こりや頭痛といった全身の症状に影響を与える可能性も否定できません。
口の中の違和感は、放置せずに専門家の診断を受けることが重要です。
親知らずの抜歯が必要なケース
親知らずが横向きや斜めに生えている、あるいは虫歯が進行している場合は抜歯の対象となります。現在は痛みがなくても、将来的な炎症や隣の歯への悪影響を防ぐため、予防的な抜歯が検討されるケースもあります。お口全体の健康を維持するために、歯科医師による適切な診断と早めの判断が大切です。
横向きや斜めの生え方
親知らずが完全に上を向いておらず、横や斜めに傾いて生えている場合は抜歯の対象となります。このような生え方をしていると、手前の歯との間に深い隙間ができやすくなります。この隙間には歯ブラシの毛先が届きにくく、汚れが常に溜まった状態になります。
汚れが蓄積すると、智歯周囲炎(ちししゅういえん)という親知らず特有の強い炎症を引き起こします。歯茎が腫れて痛みを伴い、口を開けることすら困難になる場合もあります。
リスクが少ないと判断されればそのままにする場合もありますが、定期的な診察を受けることが重要です。
虫歯や歯周病の進行
親知らず自体が大きな虫歯になっていたり、周囲の歯茎が重度の歯周病(ししゅうびょう)になっていたりする場合も抜歯が必要です。一番奥にある親知らずは治療器具が届きにくく、完璧な治療やメインテナンスを行うことが物理的に困難です。無理に治療をして残しても、短期間で再発を繰り返す可能性が非常に高いです。
さらに注意が必要なのは、親知らずの虫歯が手前の健康な歯にうつってしまうことです。大切な奥歯を守るためにも、トラブルを引き起こしている親知らずは思い切って抜歯するという選択肢があります。(※2)
※2)埋伏下顎第三大臼歯に関連する第二大臼歯遠心面う蝕の全体有病率は29.89%であり、近心傾斜の第三大臼歯では43.37%と最も高かった。
矯正用スペースの確保
これから歯列矯正を始めるにあたって、歯をきれいに並べるためのスペースが不足している場合は抜歯を行うことがあります。顎の骨の大きさに比べて歯のサイズが大きい場合、どこかの歯を減らさない限り全ての歯を理想的な位置に収めることはできません。
この際、噛み合わせにほとんど関与していない親知らずを優先的に抜歯することで、効率よくスペースを作り出すことができます。親知らずの抜歯は、美しい歯並びを獲得するための重要な準備段階となります。
親知らずの抜歯セルフチェック
| セルフチェック項目 | はい・いいえ | 推奨される判断 |
|---|---|---|
| 親知らずが斜めや横に向いて生えている | はい | 抜歯を検討します。経過観察で残せる可能性もあります。 |
| 親知らずの周辺がよく腫れたり痛んだりする | はい | 抜歯を推奨します。 |
| 親知らずがまっすぐ生えており上下で噛み合っている | はい | 経過観察で残せる可能性があります。 |
親知らずを抜かなくても良いケース
まっすぐ生えて正常に機能している場合や、骨の中に完全に埋まって周囲に悪影響を与えていない場合は、抜歯の必要はありません。健康な状態で保存しておけば、将来的に他の歯を失った際の移植用ドナーとして活用できるメリットもあります。自身の状態を正しく把握し、将来を見据えて残せる可能性を探ることも重要です。
| 抜歯が不要なケース | 状態の特徴 | 残すメリット |
|---|---|---|
| 正常な萌出 | まっすぐ生えて上下で噛み合っている状態です。 | 奥歯として食べ物を噛み砕く機能を果たします。 |
| 完全埋伏 | 骨の中に深く埋まり外界と触れていない状態です。 | 細菌感染のリスクがなくトラブルを起こしません。 |
| 移植のドナー | 虫歯がなく健康な状態で温存されている状態です。 | 将来他の歯を失った際の代替歯として利用できます。 |
まっすぐ正常な生え方
他の歯と同じようにまっすぐ上を向いて生え、対合する歯としっかり噛み合っている場合は残しておくことができます。この状態であれば、毎日のブラッシングで十分に汚れを落とすことが可能であり、虫歯や歯周病のリスクも低く抑えられます。正常に機能している歯をわざわざ抜く必要はありません。
ただし、一番奥にあるため磨き残しが発生しやすいことには変わりありません。日頃からデンタルタフトなどの専用清掃器具を使用し、丁寧なケアを継続することが残すための必須条件となります。
骨の内部に完全埋伏
歯茎の表面に一切顔を出さず、顎の骨の深い位置に完全に埋まっている状態であれば、急いで抜歯する必要はありません。外界と完全に遮断されているため、細菌が侵入して虫歯や歯周病を引き起こすリスクが極めて低いと考えられているからです。レントゲン撮影を行って初めて存在に気付くことも多いです。
ただし、骨の中で嚢胞(のうほう)という水ぶくれのような病変を作ることが稀にあります。そのため、年に一度は歯科医院でレントゲン検査を受け、周囲の骨に異常が起きていないか定期的なチェックを受けることが安心につながります。
将来の歯牙移植への活用
健康な状態で残っている親知らずは、将来他の歯を失った際の移植用ドナーとして活用できる大きなメリットがあります。例えば、大きな虫歯で手前の奥歯を抜歯しなければならなくなった際、そこへ自分の親知らずを移植して再び噛めるようにする治療法が存在します。
インプラントや入れ歯とは異なり、自分自身の組織を使うため拒絶反応が少なく、自然な噛み心地を取り戻すことができます。この選択肢を残すためにも、問題を起こしていない親知らずは大切に保存しておく価値があります。
抜歯後に崩れた歯並びは自然に治る?
親知らずを抜いても、一度崩れた歯並びが自然に改善するケースは多くありません。歯は移動した先で新たなバランスを保とうとするため、原因を除去する受動的な処置だけでは元の位置に戻る力が働かないからです。綺麗な歯並びを取り戻すには、抜歯後に矯正治療などで物理的に歯を動かすアプローチを検討する必要があります。
| 抜歯後の状態 | 起こる現象 | 必要な対応策 |
|---|---|---|
| 歯並びの変化 | 一度ズレた歯は元の位置に自然には戻りません。 | 物理的に歯を動かすアプローチが必要です。 |
| 筋肉のバランス | 新しい位置で唇や舌の力が均衡してしまいます。 | 専門的な力学に基づくコントロールが必要です。 |
| 根本的な解決 | 放置すると加齢に伴いさらに悪化する恐れがあります。 | 歯科医院での本格的な矯正治療が必要です。 |
自己回復が不可能な理由
歯は唇や頬の筋肉から内側へ押される力と、舌から外側へ押される力の均衡が保たれる位置に並びます。親知らずの圧力によって一度その均衡が崩れて歯が移動してしまうと、移動した先の新しい位置で再び筋肉の圧力バランスが釣り合ってしまいます。
そのため、後から親知らずという圧迫原因を取り除いたとしても、歯を元の位置へ押し戻すような力は発生しません。崩れた歯並びは自然に回復することはなく、むしろ加齢による歯周組織の変化でさらに悪化していく傾向にあります。
歯科矯正治療の実施
崩れた歯並びを根本的に改善するためには、ワイヤー矯正やマウスピース矯正といった歯科矯正治療を実施する必要があります。矯正装置を使用して持続的かつ適切な力をかけることで、初めて歯は目的の位置へ動かすことが可能になります。
親知らずを抜歯した後の空間を利用して全体を後方へ移動させるなど、抜歯の事実を有利に活かした治療計画を立てることも可能です。歯並びが気になっている方は、抜歯と同時に矯正治療の相談を専門医に行うことが有効な選択肢の一つです。
歯列矯正で親知らずを抜歯するメリット
矯正治療での親知らず抜歯は、歯を動かすスペースの確保や、治療後の後戻りを防ぐために大きなメリットがあります。不要な圧迫を取り除くことで、理想的な歯並びをスムーズに実現し、その状態を長く維持しやすくなります。精度の高い矯正結果を得るための、大切な準備段階の一つと言えるでしょう。
| 歯列矯正における抜歯の効果 | 具体的なメリット | 治療への貢献度 |
|---|---|---|
| 後戻りの防止 | 治療後に後ろから押し出される力を排除します。 | 長期的な歯並びの安定に大きく貢献します。 |
| スペースの確保 | 奥歯を後ろに下げるための空間を作り出します。 | 理想的な位置への歯の移動を可能にします。 |
| 治療の選択肢拡大 | 小臼歯などの健康な歯を抜かずに済む可能性があります。 | 全体の噛み合わせの質向上に貢献します。 |
治療完了後の後戻り防止
何年もかけて綺麗に並べた歯列が、治療後に再び崩れてしまう現象を「後戻り」と呼びます。親知らずを残したまま矯正治療を完了させると、後から親知らずが成長してきたり前方に倒れ込んできたりして、せっかく並べた歯を再び乱してしまう可能性が高くなります。
時間と費用をかけて手に入れた美しい口元を守るためには、後戻りのリスク要因となり得る可能性もあるので、親知らずを事前に排除しておくことが効果的です。
歯を動かす領域の確保
特にマウスピース矯正などを利用して、全体の歯を奥に向かって移動させる「臼歯遠心移動(えんしんいどう)」を行う場合、最後尾のスペース確保が前提となることが多いです。親知らずが存在しているとその後ろには骨の余裕がないため、歯を下げることが物理的に不可能です。
親知らずを抜歯することでその部分に空間が生まれ、前方の歯をゆとりを持って後ろに下げられるようになります。これにより、健康な小臼歯(しょうきゅうし)などを抜かずに非抜歯矯正を行える可能性が広がるという大きなメリットが生まれます。
よくある質問
- Q. 親知らずを抜かないと必ず歯並びが悪くなりますか?
- A. 必ずしもそうとは限りません。まっすぐ正常に生えて十分なスペースがある場合は、歯並びに影響を与えないこともあります。ただし、横向きや斜めに生えている場合は歯並びを乱すリスクが高くなります。ご自身の親知らずの状態を歯科医院で確認してもらうことが大切です。
- Q. 親知らずの抜歯後、歯並びが自然に良くなることはありますか?
- A. 一度崩れた歯並びが抜歯だけで自然に元に戻ることは多くありません。歯は移動した先で新しいバランスを取ってしまうため、綺麗な歯並びを取り戻すには矯正治療など物理的に歯を動かす処置が必要になります。
- Q. 親知らずを抜くタイミングはいつが良いですか?
- A. 一般的には、親知らずの根が完成しきっていない20代前半が抜歯しやすい時期とされています。若いうちの方が骨が柔らかく、術後の回復も早い傾向があります。矯正治療を検討している場合は、治療開始前に抜歯を行うことが多いです。
- Q. 親知らずの抜歯は痛いですか?
- A. 抜歯中は麻酔が効いているためほとんど痛みを感じません。術後は腫れや痛みが出ることがありますが、通常は処方された痛み止めで対処可能です。横向きに埋まっている難しいケースでも、適切な処置と術後管理を行うことで負担を軽減できます。
- Q. 矯正治療をする場合、親知らずは必ず抜く必要がありますか?
- A. 全てのケースで抜歯が必要というわけではありません。親知らずの生え方や顎のスペース、治療計画によっては残すこともあります。遠心移動で歯を後方に動かす場合は抜歯が必要となることが多いため、矯正の担当医としっかり相談されることをおすすめします。
親知らずや歯並びでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
ご相談・ご予約はこちらまとめ
親知らずと歯並びの関係について、本記事のポイントをまとめます。
- 親知らずが横向きに生えると前歯の歯並びを悪化させる原因の一つになる
- 虫歯や歯周病のリスクが高い場合は早期の抜歯が推奨される
- 抜歯しても崩れた歯並びは自然には治らないため矯正治療が必要となる
- 矯正治療前に抜歯することで後戻りを防ぎスペースを確保できる
ご自身の親知らずの状態に合わせて適切な診断を受けることが、健康で美しい口元を手に入れるための第一歩です。少しでも不安や気になることがあれば、お気軽に加古川アップル歯科までご相談ください。
この記事の編集・責任者は歯科医師の田中公之です。
歯科医師 田中 公之
- 略歴
- 2016年 国立大学法人 大阪大学 歯学部 卒
- 2016年 医療法人社団アップル歯科クリニック 入職
- 2019年 明石アップル歯科 副院長 就任
- 2020年 アップル歯科尼崎駅前 院長就任
- 2025年 アップル歯科クリニック CTO就任
- 受賞歴
- Apple Case Presentation2020 最優秀賞受賞
- Apple Case Presentation2021 最優秀賞受賞
- Apple Case Presentation2022 最優秀賞受賞
- 所属学会
- 国際口腔インプラント学会認定医
- 日本臨床歯科学会(SJCD)
- セミナー 補綴・審美
- モリタプラクティスコース
- SJCDベーシックコース
- SJCDレギュラーコース
- 原宿マスターコース
- セミナー 矯正
- GPO
- 岡野先生アライナーセミナー
- M&Aベーシックコース
- 渡部先生アライナーセミナー
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- セミナー 診断
- 木原先生診断力アップセミナー
- CSTPC
- ODGC
- ODGCアドバンスコース
- 咬合補綴治療計画セミナー

