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歯周病による歯の動揺、歯を抜く基準と残す方法

グラグラしている歯は抜くしか無いの?

歯周病とは?

歯と歯茎の間に、歯周病の細菌が侵入することで発症する、人類史上最も感染者数の多い感染症といわれています。詳しくは、歯周病治療のページをご覧ください。
長きにわたって歯周病の細菌を取り除かないままでいると、歯周病はどんどん進行していきます。歯周病の症状は徐々に現れ、気がつけば歯を抜かなければならない状態になってしまいます。そして歯を「抜く」「抜かない」の1つの基準が『歯の揺れ』となります。

なぜ歯が揺れると危険なのか?

歯というものは、歯冠と呼ばれる見えている頭の部分と、歯茎の中に隠れている歯根と呼ばれる部分に上下に2分割されます。歯の半分以上が歯根であり、歯根のみが骨に埋まっています。図のように、歯周病が進行すると、歯根の周囲の骨が溶けていき、歯の支えが無くなることで、歯がぐらぐらと揺れます。最後には自然に歯が抜け落ちることもあります。

そのため、歯の揺れというのは、歯自身の寿命を知らせるサインでもあり、抜歯の基準の一つとなり得るのです。

そして骨は一度溶けてしまうと基本的に元に戻ることはありません。そのため、歯周病治療は骨が溶けないうちに行う予防治療もとても大事なのです。

揺れた歯は抜くしかないの?

重要ではありますが、あくまで基準の1つですので、揺れている=抜歯ではありません。抜いた歯は戻すことはできないため、その判断は特に慎重になります。
ご年齢、お身体の状態、飲まれているお薬の内容、社会的環境、残っている歯の状態など、考慮すべきことは多くあります。事実、各学会から多くの論文こそ発表されておりますが、抜歯に際しての判断材料のみが記載されており、この場合は必ず抜きなさいと明記されている内容はありません。

ただし、抜くべき歯を無理に残そうとすることで、食事が摂りにくかったり余分に治療期間がかかったりなどと良くない点もあります。ですから、かかりつけの歯科医師としっかり相談して、一つ一つの歯との付き合い方を、判断材料と共に検討することが大切になってきます(※1)。

※1)当該歯の抜歯の判断をするための評価項目

  1. 歯に関する要因
    • 50%を越える支持骨の喪失
    • 根尖に及ぶアタッチメントロス(あるいは深い PPD)
    • 過度の動揺
    • 進行した根分岐部病変
    • 繰り返す急性炎症
    • 部位
    • 隣接歯(近接,動揺等)
  2. 一口腔単位での要因
    • 重度の歯周炎(感染リスク高)
    • 残存歯数
    • 補綴修復の有無,あるいは設計
  3. 患者に関する要因
    • 喫煙
    • ブラキシズム
    • 全身疾患
    • プラークコントロール
    • コンプライアンス
  4. 術者に関する要因
    • スキル
    • 専門分野

条件が組合わさったうえで抜歯の判断が行われる.

※1-2)歯周病罹患歯の抜歯基準

歯周治療初期における抜歯の判断基準
  1. 対症療法を行っても,過度の動揺により痛くて噛めない結果,回避性咀嚼を行ってしまう場合
  2. 十分なデブライドメントができない,あるいは暫間固定ができないほど進行した歯周炎
  3. 治療中頻繁に急性膿瘍が生じ,広範囲の歯周組織破壊の原因となる可能性がある場合
  4. どのような治療計画を立案したときにも,利用価値が見出せない場合
暫間的に保存し,歯周治療後期に抜歯を行うための判断基準
  1. 臼歯部の咬合高径を維持している場合 →プロビジョナルレストレーションによって置き換えられた後に抜歯
  2. 臼歯部の咬合高径を維持しており,かつ隣接領域にインプラントを埋入した後も機能している場合 →インプラントの上部構造が装着された後に抜歯
  3. 隣接領域の歯周外科を予定している場合 →予後不良歯は,隣在歯の歯周外科治療と同時に抜歯

揺れた歯を残す方法

歯が揺れる原因の多くは、歯周病の細菌によるものですので、それを取り除くことが必要です。歯垢(プラーク)歯石の除去をすることで、進行の浅い歯周病は止めることができます。また、咬み合わせが原因で歯が揺れる、咬合性外傷という状態もあります。咬み合わせの修正により改善が見込める場合や、一時的に接着剤で隣の歯と固定することで揺れを止める場合などもあります。

また、進行が進んだ歯周病であっても、必ず抜歯が必要になるわけではありません。症例1は、明石アップル歯科にて2010年(初診)〜2018年(写真)までの予防治療を続けられた患者様の症例です。一時は抜歯しかないと検討した歯も抜けることなく機能しています。

症例1(動揺した状態から抜歯なしで延命した例)

Before

After

治療内容早期進行型の歯周病。スケーリングとルートプレーニングによる歯周病治療からSTPⅡ(歯周病安定期治療)に移行し、歯周病の検査・管理を行った。
期間初診から9年間、45回の通院
費用およそ47,600円(9年で合計45回の通院)
内訳:プラークコントロール・機械的歯面清掃・スケーリング・スケーリング・ルートプレーニング・咬合調整など
※当初は医療費助成制度により600円/日
リスクスケーリングやスケーリング・ルートプレーニング後は歯がしみる場合があります。

もちろん、すべての方が症例1のように予防治療を続けたからと言って歯を残せるわけではありません。それでも、症例1の患者様は予防治療を続けておられなければ、おそらく多くの歯を失っていたことが予測されます。単純な話ですが「歯科に定期的に通う」ということは、揺れた歯を残すためのみならず、様々な歯科疾患から歯を守るための有用な手段であることは間違いありません。大切な歯を守るために、歯科に定期的に通う習慣を身に付けましょう。

この記事の編集・責任者は歯科医師の林 大智です。

親知らずの抜歯と治療後の腫れ

親知らずは抜いた方がいい?腫れや痛みは?

親知らずが生えてきたら

10代後半から生えてくる一番奥の歯を親知らずと言います。日本人の場合約8割り程度の方の口腔内に存在しています(※表1)。別名「第3大臼歯」「智歯」とも言われますが、乳歯の生え変わりの時期から遅れて生えてくるため、親も知らない間にはえるため「親知らず」と呼ばれています。 この親知らず、日本人は顎が小さいために親知らずが生えるスペースも足りないことが多く、普通の生え方をしないことや一番奥にあることから、汚れやすく磨きにくい歯と言われています。「磨きにくい」といことは、即ちむし歯や歯周病にもなりやすく、様々なトラブルを引き起こしてしまうため、抜歯が望ましいケースが出てきます。

表1 智歯の存在率 智歯の萌出率 智歯の埋伏率
上顎79% 下顎85% 上顎75% 下顎76% 上顎6% 下顎10%
上顎74% 下顎82% 上顎68% 下顎77% 上顎6% 下顎9%

※表1)歯の出現,発育,萠出の時期と頻度について

親知らずが起こすトラブル

前述したとおり、親知らずは歯ブラシが届きにくいため歯茎との隙間や隣の歯との間に歯垢や汚れが溜まりやすく、虫歯や歯周病(智歯周囲炎)を引き起こし、腫れや痛みの原因となります。 また症状が悪化した際、顎や首周りまで炎症が広がりやすい位置にあるため、発熱・倦怠感・腫れなどを伴う蜂窩織炎(ほうかしきえん)という恐ろしい細菌感染症へと発展する場合があり、場合によっては入院治療が必要となることもあります。このようなトラブルを防ぐため、親知らずは悪くなくても抜いてしまったほうが良い場合があります。

抜歯を必要とする場合

親知らずの一部のみが歯ぐきから出ている方、斜めに生えている方で虫歯・歯周病のリスクが高い場合、抜歯が望ましいです。また症状がなくとも第2大臼歯(親知らずの手前の歯)など、周りの歯を健康的に残したいと考えた上で、親知らずが悪影響を及ぼす可能性がるのであれば、健康な歯が害される前に抜歯をしておいた方が良いでしょう。ただし、同じ親知らずでも人によっては抜歯をしない方が良い場合の方もおられます。親知らずを抜く・抜かないはかかりつけの歯科医師に相談して決めることをお勧めします。

また、矯正治療をされる場合、親知らずを置いておくと歯並びを整える邪魔をしたり、せっかく並んだ歯がまた戻ってしまう「後戻り」の原因となるため抜歯しておいた方が望ましいことが多くあります。

親知らずの抜歯方法

外来手術で抜歯を行います。一般歯科で抜歯可能は親知らずの抜歯は入院の必要はありません。

一部のみが生えている場合、傾いて生えている場合は局所麻酔後に歯ぐきを切って、必要な部分は骨を削り、さらに歯を分割して摘出していきます。
親知らずが深くに埋まっている場合や抜歯に伴う麻痺などのリスクが高い方、多数の親知らずを同時に抜歯しなければならない方などは、大学病院に抜歯依頼を行います。場合によっては全身麻酔下で手術を行う場合もあります。 大学病院で抜歯を行う場合は、入院が必要な場合もあります。

1.麻酔下で、歯肉を開きます。

2.歯冠(歯の上の方)と根を分割します。

3.歯冠部分のみ先に除去します。

4.残りの根の部分を除去します。

5.炎症の元となる組織を掻き出し、縫合します。

治療後の腫れについて

抜歯手術は身体への負担が大きいほど、腫れや痛みが強くなります。つまり、親知らずを抜くために歯ぐきを切開する範囲が大きいほど、あるいは顎の骨を削る量が多いほど、治療後の腫れ痛みの症状も重くなります。 親知らずが大きい、頭や根のかたちが複雑、埋まっている位置が深い、抜きにくい方向に倒れている、などの場合は身体への負担が大きくなりやすいです。
手術時は、局所麻酔により痛みを感じないことが多いですが、麻酔が切れた頃から徐々に痛みが出始めますので、処方されたお薬を使うことで対処しましょう。ただしお薬が合わない場合は即座に使用を中止し、医師又は歯科医師に相談しましょう。

腫れや痛みが強いときは患部及び周辺を冷やすと治まることがありますが、冷やし過ぎは禁物です。顔・頬・顎など周囲を含めて全体的に冷やすことを心がけて下さい。

治療後の腫れや痛みはいつまで続く?

親知らずの抜歯の後は多くの場合において腫れると言っていいでしょう。もし腫れなかったら「ラッキー」だと思って下さい。腫れのピークは2〜3日後となります。その後、徐々に腫れが引いていき、7〜10日かけて引いてきます。
侵襲(体を傷つけた大きさ)が大きい場合は長引くこともあります。

一方、痛みのピークは当日・翌日と、腫れよりも早めに現れます。こちらもピークを過ぎると徐々に痛みが予約なり、おおよそ7日程度で引いていきます。痛みがある内は処方された鎮痛剤で対応します。用法・用量を守ってお使い下さい。

まれに抜歯後治癒不全、ドライソケットと言ってなかなか痛みが引かない偶発性が生じることがあります。「おかしいな」と思ったら迷わず歯科医師に相談しましょう。

親知らず、抜歯するなら費用は?

一般歯科での親知らずの抜歯は、ほとんどの場合医療保険が適用されます。そのため、抜歯にかかる費用は3割負担の方で1歯3,000円程度になることが多いです。難抜歯の場合は5,000円程度になることもあります。

ただし、それとは別に初診療が3,000円、抜糸の費用が数百円程度必要となります。

親知らずの抜歯は、初診で抜歯術を行うことはあまりありません。初診では検査をして親知らずの位置や生え方を確認し、抜歯後の感染予防のため口腔内のクリーニングを行ないます。その後、歯科医師が術式を検討した上で後日抜歯となります。ですから、親知らず1本の抜歯に必要な通院日数は短い場合で1.初診・検査・クリーニング、2.抜歯、3.抜糸・経過チェックの3回となります。複数抜歯が必要な場合、右側の上下顎、左側の上下顎であれば同日に抜歯を行うこともありますが、左右1本ずつなど、対角の抜歯は行っておりません。対角の親知らずを抜歯すると食事や咀嚼に影響がでるためです。

親知らず抜歯時の医院選びの注意点

親知らずの抜歯は、歯科医師の経験・知識はもちろん重要ですが、何より重要なのことはしっかりと検査することです。というのも下顎の親知らずの付近には「下顎管」という大きな神経が通っています。そのため、親知らず生え方や場所によってはその神経を傷つけてしまう可能性があります。神経が傷つくと麻痺が残り、日常生活に支障をきたすこともあります。麻痺はおよそ3週間から数ヶ月でなくなることがほとんどですが、中には数年間麻痺が残る方もおられるようです。
また、上あごには上顎洞といって、頬の裏側に骨の空洞があります。抜歯時に歯や骨のかけらがその穴に入りこんだり、穿孔する場合があります。

これらのリスクを避けるためには、CTによる術前検査を行うことが適切です。世の中にはCTが無い歯科医院も多い(※2)ですが、親知らずの抜歯の場合はCTのある歯科を受診するなど、偶発症に備えて予防策を検討した方が良いかもしれません。

主な歯科X線撮影 歯科用 CBCT 普及率約10%

この記事の編集・責任者は歯科医師の村田陽太郎です。

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